食生活などとの関係
食生活と生活習慣病との関係はとても深いものがあります。日本は医療上のシステムにおいて皆保険制度をとっていますので、医療費が年々増大していく状況が国家財政をかなりの勢いで圧迫してきています。そのことを含めて、食生活の乱れが大きく関わる生活習慣病や心疾患、脳卒中、ガンなどに罹患する人口が増加するのを予防することに国政レベルで取り組み始めてきました。「成人病」が「生活習慣病」へ改定され、「加齢による変形性疾患」が「ロコモティブシンドローム」と呼ばれるようになりました。「ロコモティブシンドローム」は、まだ聞き慣れない言葉かもしれませんが、近い将来には標準語になっていくことでしょう。
いずれにしても、食生活に関して心臓病、脳卒中、ガンなどとの関係が強いということで、やはり生きていくうえで知っておきたい知識はたくさんあります。動脈硬化などは、不可逆性といって進行してしまったものをもとにもどすのは不可能といわれてきましたが、現在はある程度は可能であることも分かってきました。たとえば、ビタミンB群の葉酸を摂取することは血管年齢を若返させることに一定の効果が認められてきました。
ところで、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアとの関係で食生活を語られることはかなり少ないと思われます。しかし、実のところ頸椎症や頸椎椎間板ヘルニアの症状と食生活とはとても関係が深く重要といえます。 ここでは、その点について述べますので、あくまで出来る範囲で対応していただけたらと思います。
第一に、何を摂るべきかを言う前に、食生活の基本を知っておく必要があります。それは、糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質、そしてビタミン・ミネラルをバランスよく摂り、その上で個別に必要なサプリメントなどを考えるということです。また、現在は飽食の時代ともいわれますが、普段はなるべく腹八分目の食事量を基本にして吸収率を高めることを心がけたいです。
食べすぎは、必要となる栄養分の吸収を悪くしてしまいます。もちろん、ストイックになる必要はなく、ハメをはずすときは好きなだけ飲み食いしてもらってかまいません。
そのうえで、摂取すると良いものを紹介していきます。体を温め血行を良くする食べ物として陽性食品があげられます。なるべくたくさん摂るようにしたいです。
体を温める食品を陽性食品と呼びます。陽性食品は、おもに、寒い国で作られる野菜やくだもの、土の下で取れる野菜、色の黒っぽいものなどがあげられます。生姜、玉ねぎ、ニンジン、ニンニク、大根、イモ類、ミョウガなどは有名です。また、ワサビやトウガラシも加熱して食べると陽性食品になります。
そして、頚椎症、頚椎椎間板ヘルニアに共通していえることですが、多かれ少なかれ真性の神経圧迫があるということです。であれば、ビタミンB群の摂取は必須といえます。ビタミンB群は水溶性で飲みすぎてもすぐに排泄されるので摂りすぎても害はありません。おしっこは黄色くなりますが問題ないので気にしないでください。
また、頚椎という骨・関節においてとても重要な栄養素として、カルシウム、ビタミンDは有名です。ここで知っておきたいのは、カルシウムが筋肉を動かしているということです。カルシウムはジャンクフードなどにたくさん入っているリンを多く摂りすぎると吸収されなくなります。また、お茶などに含まれるタンニンと一緒に摂っても吸収されません。
カルシウムが欠乏すると、骨がもろくなるばかりでなく、筋肉の働きも著しく悪くしてしまいます。筋スパズムといった痙攣現象が起こりやすくなります。
それと、壊れた関節の再生にかかせないのがグルコサミンとコンドロイチン硫酸です。
これらは、医薬品として販売されているものと健康食品やサプリメントとして販売されているものに分かれます。以前は、健康食品に本来の成分が入っていないなど致命的な問題が話題になりましたが、現在はかなり改善されています。医薬品を扱うメーカーが製造している健康食品やサプリメントはほぼ信頼してもらって大丈夫です。いずれにしても、頚椎症のかたには気長に摂取していただくことをお勧めします。なお、肝臓の検査数値の悪いかたは控えたほうがよいこともあります。
そして、 (ドコサヘキサエン酸)EPA、DHA 、 (エイコサペンタエン酸)という青魚から取れる脂溶性物質。フィッシュオイルという名称で言い換えられていることも多いです。これらは、一般的にコレステロールとの関係で論じられることが多いのですが、ここでは、骨の新陳代謝を正常にする重要な役割をもっていることを知っておくべきです。このことは、度重なる研究によってエビデンス(科学)に基づく効能と言い換えられるようになってきました。特に、頚椎症のかたには必須だと思われます。
さらに、良質のタンパク質を多く摂ることです。椎間板はまさにタンパク質そのものです。頚椎などの骨も、じつはコラーゲンタンパクにカルシウムがくっついたものと考えてかまいません。
以前のカイロプラクティックでは椎間板ヘルニアの人はコラーゲンを3倍量摂る必要があるなどといわれたものですが、現在はコラーゲンの摂りすぎは肝臓への負担が大きすぎるとのことで、コラーゲンタンパクは適度に摂るようにいわれています。良質のタンパク質、もしくはアミノ酸を多く摂ることは頚椎症、頚椎椎間板ヘルニアのかたにとって重要なこととなります。なお、腎臓に問題を抱えているかたはタンパク質の摂取に関して担当医師や薬剤師・栄養士などの専門家とよく相談してください。
さらに、夜間就寝中の細胞修復作用を高めたければ、アミノ酸のアルギニンを摂取することをお勧めします。これは、就寝中に成長ホルモンの分泌を促進することで知られています。なお、アルギニンの代わりになるのは「シジミエキス」で有名なオルニチンが上げられます。成長ホルモンは成長期には成長、成人では組織修復促進作用をしめすことが知られています。
また、身体は約 60 兆個の細胞で構成されています。その1つ1つの細胞のエネルギー産生機能を高める物質として還元型ユビデカレノン(コエンザイム Q10)というのがあげられます。もともとは、軽い心臓病の薬として認可されていたものですが、その効果が低いことからサプリメント販売へと格下げされた物質です。しかしながら、これの持つ細胞活性作用(ミトコンドリア活性作用)はかなり強力です。抗酸化作用も強いこともあってお勧めの栄養素といえます。ただし、コエンザイム Q10は、酸化型と還元型に分かれます。酸化型の効果はかなりの疑問があります。飲むならば、少し値段が高いですが、還元型を選ぶべきです。